フジ・メディアHDの株価が更に上昇
フジ・メディア・ホールディングスの社債のスプレッド(上乗せ金利)が急拡大している。2023年に発行した残存期間が約4年の社債では、1月中旬までの0.3%台から1.2%まで広がった。元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルへの対応を巡って企業統治の欠陥を指摘されており、社債投資家が売却している。
しかし、株式については、今もフジ・メディアHDの株価は上昇しており、2月7日の終値は24年末より45%高い2,516円になっています。

信用取引の残高を確認すると、「そろそろ株価は下がるだろう」との見通しで売り残が増加していますが、株価は下がるどころか上昇しているため、「売り方」が損切りによる買戻しを行うとともに、通常の買いと重なって株価が上昇していると考えることができます。
レオス・キャピタルワークスが大株主に!
では、誰がフジ・メディア・ホールディングス買っているのでしょうか。2月7日、投資信託「ひふみ」で知られる運用会社のレオス・キャピタルワークスがフジ・メディア・ホールディングス(HD)の株式を継続して買付け、5.12%保有していることが大量保有報告書により判明しました。
大量保有報告書は、上場会社等が発行する株券等保有割合が5%を超えたときに、大量保有者となった日から5日以内に内閣総理大臣に提出しなければならないものです。なお、大量保有報告書を提出すべき者は、大量保有者となった後に株券等保有割合が1%以上増減した場合や大量保有報告書に記載すべき重要な事項の変更があった場合には、変更報告書を当該日から5日以内に内閣総理大臣に提出しなければなりません。

フジ・メディアHDの1月下旬から2月初旬にかけての株価の上昇は、レオス・キャピタルワークスの大口の株式の購入が大きな要因の1つとなっています。
自社株買い
また、2月5日に野村証券は、(株)フジ・メディア・ホールディングスの目標株価を従来の2,420円から2,990円に引き上げ、投資判断は3段階で最上位の「バイ(買い)」に据え置いたという報道もあり、株価については強気の予想を立てています。
野村証券の担当アナリスト原畑亮平氏は5日付リポートで「広告主の動向が不透明なため、26年3月期上期までは広告出稿の停止影響が継続する」との見方を示した。一方で原畑氏は株式市場におけるフジ・メディアHDの経営に対する注目が集まるなか、「(フジ・メディアHDの)自己資本利益率(ROE)5%以上の目標達成に向けた資本政策が積極化する」と指摘。年間100億円分の政策保有株を整理するほか、自己株式の取得が25年3月期と同じ年間150億円規模で継続すると予想した。
フジ・メディアHDは昨年3月に開催された取締役会で発行済み株数の4.6%にあたる1,000万株、取得価格の総額は150億円を上限に自社株買いすることを決議、昨年末時点で約800万株の取得が完了しています(取得期間は2025年3月31日まで)。
自社株買いとは、会社が以前に発行した株式を取得し、取得した株式を消去することで、会社の自己資本は減少することになります。
自己資本利益率は、ROEともいい、自己資本を用いて、どれほどの利益を獲得できたかを示す比率になります。当期純利益÷自己資本×100、又は1株当たりの当期純利益÷1株当たりの自己資本×100で計算されます。自社株買いによる発行済み株式数の減少によって、1株当たりの当期純利益が増加します。そのため、自己資本利益率の計算式の分子が増加しますので、自社株買いを行うことで、自己資本利益率は上昇することになります。

自社株買いによるPBRの影響はどうでしょうか。PBRはROEとPERの積で計算されます。
自社株買いによって、1株当たりの当期純利益が増加しますので、ROEは上昇します。しかし、PERは分母の値が増加することによって、PERは下落することになり、結果的にPBRは影響しないことになります。しかし、ROEの上昇は一般的に株価の上昇に繋がりますので、株価が上昇すると、PERの分子の値が増加することにより、PBRも上昇することになります。つまり、自社株買いは、PBRの上昇にも繋がるのです。

野村證券の強気の投資姿勢の背景は、予定されている自社株買いが継続して行われるのであれば、ROEやPBRが上昇し、それが株価の上昇にも繋がるだろうという考えがあるのだろうと思われます。
大量保有者となったレオス・キャピタルワークスは、おおよそ2,135円で取得したフジ・メディアHD株式を売却するのでしょうか?
売却益を得るためにフジ・メディアHD株式を売却すると、売り圧力によって、株価が急落するでしょう。しかし、株式を更に買付け、フジ・メディアHD株式の保有割合を増やすと、買い圧力により株価はまだ上がるでしょう。
仮に短期に売却益を得るためにフジ・メディアHD株式を取得しているのであれば、大量保有報告書によって情報が公開されるほどの株式の取得は行わないはずですので、フジ・メディアHD株式の取得は、短期に売却を得ることではなく、フジ・メディアHDに対する発言力を高めるためかもしれません。いわゆる物言う株主と呼ばれるアクティピストの立場です。
また、レオス・キャピタルワークスは、昨年9月末にテレビ東京ホールディングスの株式を5.31%保有し、大量保有報告書を提出しています。
レオスキャピタルワークスは、SBIホールディングスの連結子会社です。メディア系の企業の大株主になり、発言力を高めていくことは、親会社であるSBIホールディングスの考えも入っているのかもしれません。
また、今回の件では、日枝相談役を中心とした経営陣の退陣に対するシナリオが裏では飛び交っているのかもしれません。第三者委員会の調査結果により、旧経営陣の総退陣、そして新経営陣の誕生という流れが裏ではある程度整っているのであれば、レオス・キャピタルワークスが大量保有者になるのも理解することができます。