2025年度版  投資信託及び投資法人に関する業務①

証券外務員

投資信託の概要

集団投資スキーム

多くの投資家から集めた資金により事業運営や有価証券等への投資を行い、その収益を出資者である投資者に分配する仕組みのことを集団投資スキームといいます。

集団投資スキームの形態は大きく資産運用型と資産流動化型の2種類に分けることができますが、資産運用型の代表として投資信託があります。また、投資信託のことをファンドと称することもあります。

投資家にとって投資信託を購入するメリットとして下記の内容を挙げることができます。

  • 少額の資金で購入することができるという点(一般的に1万円程度で購入可能)
  • その道のプロによって運用されるため、高いリターンが見込める点
  • 株式や債券などに分散投資することが可能という点

投資信託の全体像

投資信託の全体像を示しておきます。

公募投資信託

公募投資信託と私募投資信託

公募投資信託とは、不特定かつ多数の投資家に向けて、募集を行う投資信託のことです。この場合の多数とは、50名以上です。

私募投資信託は、少数の投資家や適格機関投資家を対象としたもので、前者を一般投資家私募、後者を適格機関投資家私募といいます。なお、運用等に関する規制は、公募投資信託よりも緩やかになっています。

契約型投資信託と会社型投資信託

投資信託は、投資家が拠出する基金(ファンド)に関する法的スキームの違いによって、契約型投資信託会社型投資信託に分けることができます。

契約型投資信託は、法律上、投資信託を運営する当事者の役割により、委託者指図型投資信託委託者非指図型投資信託に分類されます。

委託者指図型投資信託は、委託者と受託者が締結した投資信託契約に基づく信託財産という形態で基金が設立され、当該信託の受益権を投資家が取得する形態です。委託者指図型投資信託の場合、信託財産そのものに法人格はありません。契約型投資信託については、後で詳しく学習します。

会社型投資信託は、資産運用を目的とする法人を設立し、その発行する証券を投資家が取得するという形態です。会社型投資信託の場合、法人格を持った投資法人の資産運用という形態をとります。投資法人についても後で詳しく学習します。

証券投資信託

株式投資信託と公社債投資信託

証券投資信託は、投資信託財産総額の2分の1を超える額を「有価証券及び有価証券関連デリバティブ取引に係る権利」に投資する委託者指図型投資信託です。

証券投資信託は、株式投資信託公社債投資信託に分けることができます。

公社債投資信託は、国債、地方債、社債、コマーシャルペーパーなどに限って運用するものとされており、株式を一切組み入れることができない投資信託です。代表例として、MMF(マネーマネージメントファンド)やMRF(マネーリザーブファンド)などの日々決算型ファンドがあります。なお、2024年9月末現在、MMFの設定はありません。

株式投資信託は、公社債投資信託以外の証券投資信託であり、投資信託約款の投資対象に株式を加えているものとされています。

そのため、株式投資信託の場合、株式のみならず、株式と債券の両者を一定の割合ずつ組み入れるファンドも、公社債を中心に運用し、全く株式を組み入れずに運用していても、投資信託約款の投資対象に株式を加えているものについては、すべて株式投資信託に分類されることになります。

単位型と追加型

株式投資信託と公社債投資信託は、ファンドが設立された後の追加資金の有無によって単位型追加型に分けることができます。

単位型投資信託は、ある一定の期間に投資家から資金を募り、集まった資金でファンドを設立した後は、資金の追加募集は行わない投資信託です。

単位型投資信託は、継続して定期的に同じ仕組みで設定していくファミリ-ファンドユニットと投資家のニーズ等に応じて随時設定するスポット投資信託に分けることができます。

追加型投資信託は、オープン型投資信託ともいい、当初集めた資金でファンドを設立した後も、追加資金を募り続ける投資信託です。

ETF(上場投資信託)

ETFとは、Exchange Traded Fundsの略で、取引所に上場される投資信託です。そのため、ETFのことを上場投資信託と呼ぶことがあります。

2001年のETF制度創設当時のETFは、特定の日本の株価指数に連動することを目的とするもののみが認められていました。

その後、海外への株価指数、商品価格等への連動を目指すETFも登場し、多様化が急速に進んでいます。また、2023年6月より連動対象となる指標が存在しないETF(アクティブ運用型ETF)も認められました。

ETFは、取引所において上場株式と同じように取引所における市場価格で売買されます。他の証券投資信託は、基準価額に基づく価格で購入、換金されますが、ETFは、市場価格で売買される点に注意が必要です。

ETFの取引単位は、ファンドごとに設定されており、売買においては、指値注文や成行注文が可能であり、信用取引も可能です。

クローズドエンド型とオープンエンド型

投資信託は、満期日前に解約可能か不可能かの観点から、オープンエンド型クローズドエンド型に分けることができます。

オープンエンド型とは、満期日前に投資家が解約することができる投資信託です。投資家が解約することで、発行者が買い戻すことになります。なお、換金は、基準価格と呼ばれる純資産価格に基づいて行われます。

クローズドエンド型は、満期日前に解約することができない投資信託です。そのため、投資家が満期日前に投資信託を換金する場合、販売会社に買い取ってもらうことになります。

オープンエンド型は、解約によって、集めた基金の減少が絶えず行われるため、資金量が不安定な状態で運用することになりますが、クローズドエンド型は、原則として解約することができないため、基金の資金量が安定した状態で運用することができます。

クローズドエンド型とオープンエンド型との区分は、投資対象とは直接的な関係はありません。しかし、オープンエンド型の場合には、投資家の買戻し又は解約請求に応じるために、ファンドで保有する資産を売却、換金して投資家に支払う必要があるため、不動産のように容易に換金しにくい資産を多く組み入れたファンドは、クローズドエンド型で組成した方が運用管理がしやすいと考えられます。

その他の投資信託

マザーファンド

マザーファンドとは、受益権を投資信託委託会社自らが運用の指図を行なう他の投資信託(ベビーファンド)に取得させることを目的とする投資信託です。

投資家のニーズはそれぞれ異なるため、資金を集めるためのファンドは、毎月分配型のように顧客のニーズに合ったものを準備し、その運用はマザーファンドと呼ばれる1つのファンドで運用されます。

運用の効率化を図るため、同一の投資対象・運用方法を仕組みの異なる複数のベビーファンドで利用した場合などに用いられます(ファミリーファンド)。

ファンド・オブ・ファンズ

投資信託(投資法人)及び外国投資信託(外国投資法人)への投資を目的とする投資信託(投資法人)をファンド・オブ・ファンズといいます。

複数の投資信託を投資対象とするため、分散効果が効いて運用の安定性がさらに高まることが期待されます。しかし、実質的に投資信託を二重に購入するということになり、それらの信託報酬等の費用がかかることなどから、実質的な信託報酬が一般の投資信託よりやや割高になる可能性があります。

マザーファンドのみを主要投資対象とするファンドは、ベビーファンドの類型に入るため、ファンド・オブ・ファンズには含まれません。

毎月分配型投資信託

毎月決算を行い、毎月分配金を支払おうとする投資信託が毎月分配型投資信託です。必ず一定の分配金が支払われる訳ではなく、分配金が支払われないこともあります。収益を超えて分配金が支払われることもあり、この場合、元本の一部払い戻しに相当する場合もあります

確定拠出年金向けファンド

確定拠出年金とは、掛け金の運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度で、この確定拠出年金の運用商品として提供されることを目的としたファンドを確定拠出年金向けファンドといい、個人型と会社型があります。

個人型は、2017年に制度改訂が行われ、公務員や主婦など加入対象範囲が拡大されるとともにiDeCoという愛称が付され、制度の周知・拡大が図られています。

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