2025年度版  証券外務員一種・二種(付随業務)

付随業務 証券外務員

代表的な付随業務

金融商品取引業者は、内閣総理大臣の登録を受け、金融商品取引業を営む者ですが、金融商品取引業以外に付随業務、届出業務、承認業務を行うことができます。届出業務は、内閣総理大臣に届け出て行うことのできる業務で、承認業務は、内閣総理大臣の承認を受けて行うことのできる業務です。

付随業務は、内閣総理大臣への届出や承認が不要な業務で、金融商品取引業と切り離すことが難しい業務や切り離すことが合理的でない業務です。この付随業務について確認していきます。

例えば、信用取引は、金融商品取引業者が顧客に信用を供与して行う有価証券の売買取引ですので、金融商品取引業者は、顧客に対して金銭や株券の貸し付けを行わなければなりません。

つまり、顧客と信用取引を締結するためには、金銭や株券を顧客に貸し付けるという業務が切り離せないものとなります。このような業務は、金融商品取引業に付随する業務として、内閣総理大臣への届出や承認を受けることなく行うことができます。このような業務を付随業務といいます。

代表的な付随業務の種類

  1. 有価証券の貸借又はその媒介若しくは代理
  2. 信用取引に付随する金銭の貸付け
  3. 有価証券に関する顧客の代理
  4. 顧客から保護預りをしている有価証券を担保とする金銭の貸付け
  5. 累積投資契約の締結
  6. 有価証券に関連する情報の提供又は助言
  7. 他の金融商品取引業者の業務の代理
  8. 他の事業者の経営に関する相談に応じること 等

有価証券の貸借又はその媒介若しくは代理業務とは、顧客が制度信用取引において、株券等の売却を行う際に、金融商品取引業者が証券金融会社から調達する業務(貸借取引)などを挙げることができます。

信用取引に付随する金銭の貸付け業務は、信用取引を行おうとする顧客に対し、金融商品取引業者が資金を当該顧客に貸し付ける業務です。

有価証券に関する顧客の代理業務とは、公社債の払込金の受入れ及び元利金支払いの代理業務、株式事務の取次業務、顧客への各種支払金の代理受領業務等が挙げられます。

キャッシング業務

付随業務の1つである「顧客から保護預かりをしている有価証券を担保とする金銭の貸付け業務」の1つにキャッシング業務があります。

投資信託及び投資法人に関する業務の範囲で学習しましたが、追加型公社債投資信託であるMRFは、証券総合口座用ファンドであり、安全な公社債等を投資対象としています。

MRFについては、午前中に解約を請求を受付け、かつ顧客が当日支払いを希望した場合のみ当日に支払いがなされ、それ以外は、翌営業日に支払われます。

このようにMRFは、原則として、午後からの解約請求については、翌営業日に支払われることになり、即日に換金される銀行の普通預金口座と比べて利便性が劣ることになります。そのため、午後からの解約請求でも、即日支払いを可能とするのがキャッシング業務です。

キャッシング業務とは、顧客がMRFとして運用している有価証券を担保として、解約代金相当額を解約請求日に融資する業務です。

MRFの換金は、顧客からの解約請求を受け付けることで、顧客分の公社債等が売却され、その売却代金が顧客に引き渡されることになります。午後からの解約請求の場合、その手続きが翌営業日までかかることから、解約代金の支払いは翌営業日となります。

キャッシング業務とは、解約請求当日に顧客への解約代金相当額の支払を可能とするために、解約請求に係る公社債等の有価証券を担保として解約代金相当額を解約請求日に貸し付ける業務です。この業務により、顧客は即日に解約代金を受け取ることができるのです。

貸付限度額は、MRFの残高に基づき計算した返還可能金額又は500万円のうち、いずれか少ない金額を基準に、各金融商品取引業者が定める金額とされています。

キャッシングによる貸付利息は、解約請求日から翌営業日前日までのMRFの分配金手取り額とされています。分配金手取り額と貸付利息は相殺されることになり、融資による支払利息は発生しないことになります。

翌営業日は、顧客に支払われる解約代金により、貸し付けた金額は弁済されるため、貸付期間は貸し付けが行われた日の翌営業日までの間とされています。

キャッシングの利用については、書面による申し込みは不要です。しかし、顧客に「キャッシングを利用する」旨の意思確認を行う必要があります。

累積投資契約

続いて、代表的な付随業務の1つである「累積投資契約の締結」について確認します。

顧客と累積投資契約を締結した場合、顧客から預かった金額に見合う有価証券を、いったん金融商品取引業者が買い付け、その後、金融商品取引業者が買い付けた有価証券を、顧客の払込金等に応じた数量分、顧客に売り付けることで、顧客は当該有価証券を取得する契約です。

累積投資契約において取り扱うことができる有価証券は、上場株券、国債、地方債等の債券、投資信託受益証券、投資証券などです。

代表的な累積投資契約に株式累積投資があります。株式累積投資とは、投資者から資金を預かり、当該金銭を対価として、毎月一定の日に特定の銘柄の株式等を買付ける制度です。株式業務で学習した内容です。

株式累積投資では、投資者は比較的少額からでも、一定資金で定期的に株式等を買付ける(ドル・コスト平均法)ことが可能となります。

なお、1顧客の1銘柄に係る買付金額は、200万円未満にしなければなりません。

買付け株式数の累計が、単元株に達しない場合には、株式累積投資口座で管理され、単元株に達した場合には、保護預かり口座に振替えられ、投資者は通常の株主になります。

株式累積投資と内部者取引規制との関係についてですが、株式累積投資を通じた株式の買付けについて、定時定額の払込金をもって機械的にその株式を買い付けている場合には、内部者(インサイダー)取引規制の適用が除外されます。

仮に重要事実を知った会社関係者等が、その情報が公開される前に、この制度を通じて買付けを行った場合でも、その買付けがその情報を知る前に締結された株式累積投資契約に基づく定期的な買付けである限り、内部者取引規制の違反にはなりません。

ただし、重要事実を知った後に株式累積投資契約を締結又は変更し、その契約に基づき、重要事実が公表される前に行う買付けは、内部者インサイダー)取引の規制対象となります。

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